なぜ多層PCBの絶縁層厚さは、設計値どおりにならないのか?
― プリプレグの「厚さ」と、積層後の「厚さ」は同じではない ―
プリプレグには厚さの品番があります。それなのに、多層PCBを積層した後の絶縁層厚さは、単純にプリプレグの数字を足せば決まるわけではありません。なぜでしょうか。答えは、積層中に樹脂が動き、材料と回路の状態が変わるからです。
1.まず、プリプレグは「完成品の厚さ」ではない
プリプレグは積層前の材料です。加熱・加圧すると樹脂が流動し、回路の凹凸を埋めながら硬化します。そのため、積層前のシート厚さと、積層後に残る絶縁層厚さは区別して考える必要があります。
2.銅がある場所と、銅が少ない場所で違う
内層回路には銅が多い場所と少ない場所があります。積層時の樹脂の逃げ方や充填のされ方は、回路パターンによって変わります。つまり、同じプリプレグを使っても、回路構成まで同じとは限りません。
プリプレグ厚さ+ガラスクロス構成+銅パターン+積層条件→最終絶縁層
3.なぜガラスクロスの種類まで関係するのか?
ガラスクロスは樹脂を保持する骨格です。糸の太さや織りの状態などが違えば、樹脂が存在する空間や流れ方も変わります。だからプリプレグは「樹脂だけ」の材料として見られません。
4.高速信号では「厚さ」の意味がさらに重くなる
高速伝送では、配線と基準面の距離や誘電体の電気特性が伝送線路の設計に関係します。絶縁層厚さが狙いから外れれば、インピーダンス設計にも影響し得ます。
「プリプレグの品番」と「積層後の絶縁層」は同じ数字ではない。工程まで見て初めて、厚さの意味が分かる。
5.だから積層条件の管理が重要になる
温度、圧力、時間、材料の組み合わせなど、積層条件は最終形状に関係します。材料メーカーのデータだけでなく、実際の基板製造工程との組み合わせで評価する必要があります。
まとめ
- 積層後の絶縁層厚さは、プリプレグの公称厚さだけでは決まらない。
- 樹脂流動、銅パターン、ガラスクロス、積層条件が関係する。
- 高速PCBでは絶縁層厚さがインピーダンス設計にもつながる。
平賀兼好の徒然メモ
電子材料は、カタログの数字だけを見ると単純に見えます。しかし実際には、材料・工程・回路・用途がつながっています。「なぜその性能が必要なのか」まで追うと、別々に見えていた話が一本の線になります。
電子材料は、カタログの数字だけを見ると単純に見えます。しかし実際には、材料・工程・回路・用途がつながっています。「なぜその性能が必要なのか」まで追うと、別々に見えていた話が一本の線になります。