なぜ9μmの銅箔でも、微細配線ができるとは限らないのか?
― 「薄い銅箔」と「細い配線」は、同じ話ではない ―
9μmのような薄い銅箔が使われると、「これで微細配線が作りやすくなる」と考えがちです。しかし実際には、銅箔の厚さだけで配線の細さが決まるわけではありません。エッチング、表面処理、樹脂、回路形成条件などが重なって、初めて微細配線の品質が決まります。
1.まず、「薄い」と「細い」は別の指標
銅箔の厚さは、銅そのものがどれだけ厚いかを表す数字です。一方、配線の線幅・スペースは、回路をどれだけ細かく形成できるかという別の指標です。
もちろん、銅箔を薄くするとエッチングで銅を除去する量が減るため、微細化に有利になる場合があります。しかし、それだけで微細配線が完成するわけではありません。
2.なぜ厚さが薄いと微細化に有利なのか?
回路形成では、不要な銅をエッチングで除去します。銅が厚いほど、横方向へのエッチングの影響も無視しにくくなり、仕上がりの線幅を狙い通りに管理することが難しくなります。
ただし、これは「薄ければ必ず細線化できる」という意味ではありません。材料と加工工程を一緒に考える必要があります。
3.では、なぜ9μmでも簡単ではないのか?
9μmまで薄くすると、今度は材料そのものの扱いやすさが課題になります。搬送時のシワや破れ、厚さのばらつき、表面状態、寸法安定性などが、最終的な回路品質に影響します。
つまり、微細配線では「薄い銅箔を買えば終わり」ではなく、その銅箔を工程の中で安定して扱えるかまで重要になります。
4.さらにエッチング条件が効いてくる
同じ9μmでも、銅箔の表面状態や処理、エッチング液、時間、温度、回路パターンなどが違えば結果は変わります。
| 要素 | 微細配線への影響 |
|---|---|
| 銅箔厚さ | 除去する銅量や形成しやすさに関係 |
| 表面処理 | 樹脂との密着や加工後の表面状態に関係 |
| エッチング条件 | 線幅・断面形状・均一性に関係 |
| 材料の均一性 | パネル内・ロット間の安定性に関係 |
5.AI・高密度基板につながる理由
AI・HPC向けの基板では、限られた面積に多くの信号を通す必要があります。そこで微細配線や多層化が重要になります。
ただし、高密度化では銅箔だけでなく、CCL、樹脂、ガラスクロス、めっき、回路形成など、複数の工程を同時に成立させる必要があります。
「9μmを含む材料・工程の組み合わせが微細配線を成立させる」
材料屋として面白いのは、数字が一つで答えにならないところです。9μmという数字を見たら、私は次に「幅は? 均一性は? 表面は? 何に使う? どう加工する?」と考えます。数字の後ろにある条件まで見ると、材料の本当の難しさが見えてきます。
まとめ
- 9μmの薄銅箔は微細配線に有利な場合がある。
- ただし、銅箔の厚さだけで配線幅は決まらない。
- エッチング、表面処理、均一性、搬送性などが一体で効いてくる。
- AI・HPCの高密度基板では、材料と工程を複合的に見ることが重要。